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ハドレーボーイズ、ビリンガムへ行く。

文・小原 直史|旅行家






旅のはじまり


羽田からソウル経由でロンドンまで23時間。列車にのりかえ2時間ほどでバーミンガムだ。

バーミンガム市内からタクシーで起伏ある道をひた走り30分ほどでビリンガム本社についた。

タクシーの窓越しに、写真で見たとおりのクリーム色の社屋にBillinghamのロゴ。

数年前まで自分がまさかビリンガム本社に来るなんて夢にも思わなかった。

「とうとうビリンガムに来てしまったね」と興奮気味の小倉さん。

とんでもないポカをしないかと緊張する自分はひどい時差ボケだったのだ。





ハドレーボーイズ|オリエンタルホビー小倉氏と筆者(右)



「 小原さん、ビリンガムの本社訪問してみない? ハドレーボーイズで。」

オリエンタルホビー小倉さんの一本の電話からはじまった英国バーミンガム、ビリンガム社への旅。

小倉さんはブルーのハドレープロ。自分は使いこんだハドレーオリジナル。ふたりあわせてハドレーボーイズ。

オリエンタルホビーがビリンガムの公式ショップになったころ、冗談交じりに始めたハドレーファンクラブだ。

これまで望まれるままに、ハドレーを相棒に世界中をあちこち旅したエッセイを書いたり、横浜のビリンガム展示会で

お手伝いをしてきたけれど、、、まさか英国ビリンガム社まで随行するとは、これまた愉快な展開になってきた。



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そしてビリンガム社へ


2024年3月15日午前11時、車から降りると社長のハリーさんとデミさんが笑顔で迎えてくれた。

改装工事をしたばかりという社屋の階段を上り、空色の壁が気持ち良い応接室へ、、、そしてそこでは、

僕らのヒーロー、ビリンガム創業者マーティンさんとロスさん夫妻が笑顔で待ち受けてくれたのだ。

テーブルにはロスさんお手製のハードケーキ。バターをたっぷり塗って食べるべしといただいたが、

これがすこぶる美味しい。イギリスらしい重厚な味ながらいくらでもお腹に収まっていく。

自己紹介から他愛も無い話になり緊張がほぐれてくる。ひといきついたところでいよいよ工場見学だ。




ファクトリーは天井から取り込まれた柔らかい自然光で満たされていた



工場に足を踏み入れると、ちょうどその一角では、出産を終えて育児休暇に入るスタッフの祝賀会が開かれていた。

ここのところ出産ラッシュが続いているらしい。おめでたい。スタッフ全員でお祝いをしている風景がほほえましい。




メンバーの出産を祝うパーティ|壁には創業50周年を祝う幕がみえる



この光景を目の当たりにしてビリンガムがどういう会社なのかわかった気がした。働く人が幸せな会社なのだ。

みんなニコニコして楽しそうだ。そういう現場で作られたビリンガムのカメラバッグが世界中に送りだされていく。




社長のハリーさんの案内でまわる工場見学は世界中から集めた資材の倉庫からはじまった




端が切れてもほどけないショルダーストラップはスペースシャトルのパラシュートハーネスと同じ製法だ




レザーパーツをカッティングする治具




すべてのビリンガムバッグにはシリアルナンバーが縫製され製造履歴が個別に管理される



工場の様子はあらかじめビリンガムのホームページで読んでいたとおりで自動化されているところは徹底していた。

ハリーさんいわく、熟練の職人仕事も数個であればいいのだが、それを数百個もこなすとなると苦行になりかねない。

だから自動化できるところは最新機器にまかせて、一番大切な製造工程に熟練の技を生かしているとのことだ。




ハドレースモールプロを縫製するパトリシアさん



革や生地のカッティングや縫いつけのための治具なども自分たちであつらえたもので合理化を徹底している。

そして何より面白かったのは社員同士があちこちで頻繁にコミュニケーションをとりながら作業をすすめている。

疑問があれば確認するし改善すべきはそうする。各自が自発的に創意工夫して仕事をしているのだ。




レザーパーツのコパ染色をするケリーさんとポーラさん






キャロラインさんは今年で勤続40年


マーティンさんに勤続40年になるキャロラインさんを紹介してもらう。ほがらかでとてもチャーミングな方だ。

わたしなんて大したことないのよと恥ずかしそうに笑う。熟練の技でカメラバッグを縫い上げる所作が美しい。




笑顔を絶やさないマーティンさんは工場見学に終始同行してくれた




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サプライズ、そしてお別れ


工場見学を終えてと応接室にもどると、ナオにサプライズがあるのよとデミさん。なんと!

既に生産終了したハドレーオリジナルをプレゼントされたのだ!オリエンタルホビーに書いた記事

ビリンガムでも読んでいて20年も同じハドレーで旅をする輩がいるなら作ってやろうとなったらしい。



創業者のマーティンさんとロスさん、そして社長のハリーとデミさんと



あまりの嬉しさに興奮してしまい旅先でどうやってハドレーを枕にするのか床に横になってデモストレーション。旅先で

カメラバッグを枕にして寝れば置き引きに合わないと説明。それを見てたハリーさんもカメラバッグを枕に横たわる。







ちょっと待ってくれとマーティンさんはカメラを取りに奥の部屋に。自分とハリーさんがビリンガムを枕に横たわる

様子を嬉しそうに撮影するマーティンさん。まさかの展開にロスさん、デミさんも大笑い。小倉さんは苦笑い。





小倉さんは愛用のハドレープロにマーティンさんのサインをお願いした



金曜日なので工場も早じまい。丘の上にある瀟洒なレストランに招待される。座るやいなや、メニュー

をはさんで始まるマーティンさんとロスさん夫妻の夫婦漫才のような珍問答がアットホームな笑いを誘う。

食事は伝統的なパブのコースメニュー。スターターからメイン。そしてデザートまでごちそうになる。

ロスさんが嬉しそうにウィスキーをすすめてくれる。遠慮してシングルにするとダブルにしなさいと一同。

小倉さんはハドレーの裏ふたにマーティンさんのサインをもらって嬉しそうだ。裏地がオレンジなので目立つ。

自分は例のをやってくれとペットボトルのキャップの目玉芸を披露。小倉さんは苦笑い。マーティンさん爆笑。




これが目玉芸






日がくれるころに楽しい宴は終わり、皆さんに見送られて車に乗り込む。

タクシーの後部座席から彼らが見えなくなるまで手をふる。

なんか夢みたいな楽しい時間だったなぁと小倉さん。

そう夢みたいなビリンガム本社を訪問した一日だった。





忘れられない一日に



そんなときに感じた大事なことはしばしば忘れるものだけど

この日だけはしっかりと覚えていなくちゃと思ったことがある。

それは、自分がビリンガムを使っていてよかったということ。

このバッグをどんな人たちがどんな気持ちで日々作り出しているかということ。

まちがいなく価値のあるカメラバッグであるといういこと。

使えば使うほど愛着がわくこと。

そしてこれからも人生をともにするカメラバッグであること。




お馴染み、ビリンガムのフロントロゴ




ひょんなことから実現した今回のビリンガム本社訪問。バーミンガムのカメラショー

に合わせてビリンガム本社に一緒に行かないかと打診してくれた小倉さん。

そんな二人をあたたかくもてなしてくれたロスさんマーティンさん夫妻をはじめ

ハリーさんとデミさんとマイクさんらビリンガム本社の皆さんにあらためて感謝です。

こんな幸せな楽しい会社訪問はなかなかあるものではないと思います。願わくば彼らに

とっても楽しいひと時であったらと。そしてそう遠くない未来に再訪できたら嬉しい。

ハドレーボーイズ!




バーミンガムへ向かう朝、ロンドン、ユーストン駅で

© 小原 直史 @ Instagram



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